P.F.ドラッカー『マネジメント 第21章』【要約】

‐第21章 責任意識の強い働き手 まとめ‐

働き手に責任を引き受けるよう求め、それに応えてもらうためには(1)生産的な仕事、(2)フィードバック情報、(3)たゆまぬ学習が求められる。企業とマネジャーにはこれらを設計する責務がある。そして、自分の業務とチームへの責任、組織全体の成果や業績への責任、職場コミュニティの社会的任務への責任を誰もが引き受ける組織を築き、率いていくという仕事も残されている

 

本章からの抜粋は以下とした。

1. 業務に焦点を当てる ~ 自己管理のためのフィードバック

・働き手に責任を引き受けるよう求め、それに応えてもらうためには、企業とマネジャーには何が必要か。焦点は、業務に当てなければならない。業務の中身を、達成意欲を満たするものにしなけれあならない。

・このためには、(1)生産的な仕事、(2)フィードバック情報、(3)たゆまぬ学習が求められる。仕事を研究せず、業務プロセスを統合せず、満たすべき基準やコントロールのあり方を十分に検討せず、情報ツールを設計しないまま、「仕事に責任を持つように」とただ求めるのは、愚かであるばかりか、経営層の無能さの証である。

・これは、「ひとりひとりの創造性を活かそう」という、手を変え品を変え登場する昔ながらのスローガンにも反する。・・・(中略)・・・創造性は、分析や知識の代わりにはならない。

・責任を果たすには自己管理が欠かせない。そのためには、基準値に対して実績がどの程度か、折に触れて情報を得る必要がある。・・・(中略)・・・情報は業務に根差し、業務に焦点を当てたものでなくてはいけない。そして何より、働き手のツールとして役立つ情報である必要がある。目的は、あくまでも働き手の自己管理であり、周囲のコントロールでも、ましてや操作でもない。

・フィードバック情報は、働き手が自己評価と方向づけを行うためのツールの役割を果たす。これこそがまさしく、フィードバック情報の真価であり、働き手の力の源泉でもある。

 

2. たゆまぬ学習 ~ 知識労働

・(たゆまぬ学習に)組織的な取り組みは欠かせない。働き手に対して絶えず以下のように問いかけなくてはいけない。「自分とみんなの業務の生産性は業績を上げ、より大きな達成感をもたらすために、何を吸収したか。どのような知識、ツール、情報が必要か。新しいニーズに応え、新しい業務能力を身につけ、新しい手法を使いこなすためには、どのような備えが最もふさわしいか」

・三つすべての領域のプランニングに、最初から働き手を巻き込んでおく必要がある。

・働き手が仕事への責任を引き受けるに当たっては、もうひとつ、明確な権限関係に守られている、という条件が欠かせない。

・(チームが目標水準を上回る実績をあげるのは)これは別に、仕事が楽しくなったからではないし、仕事は楽しいものであるべきではない。心理面の役割が大きいのは確かだが、モチベーションだけが要因でもない。なぜ働き手が業務やチームの設計に責任を持つのが望ましいかといえば、彼らは自分が得意とする分野の知識や経験を活かすからである。

 

3. 職長の救済 ~ 自治的な職場コミュニティ

・職長が本来の役割を健全に果たせる状態を取り戻すためには、業務と作業チームへの責任をそれぞれの働き手に負わせるのが、最適な、そしておそらくはただひとつの方法だろう。

・誰もが、自分の業務とチームへの責任、組織全体の成果や業績への責任、職場コミュニティの社会的任務への責任を引き受ける組織を築き、率いていくという仕事が残されている。

 

▼【告知】読書会開催しています▼

第2回 ドラッカー読書会 - 働く戦闘力を解放する

P.F.ドラッカー『マネジメント 第20章』【要約】

‐第20章 サクセスストーリー:日本企業、ツァイス、IBMまとめ‐

驚異的な実績を残した企業のケーススタディ。「権限」をまとめ上げるのではなく、「責任」を中心にまとめ上げることを通じてマネジメントを行うこと。

 

本章からの抜粋は以下とした。

1. 日本の生産管理 ~ 終身雇用

・(日本の研修や訓練の)背後にある目的意識や学習のあり方は、欧米、さらには儒教的伝統の強い中国とは全く異質である。儒教的思想は、欧米の発想に似て「何かを学ぶのは、これまでと違う、より大きな仕事に備えるためだ」という考え方を前提にしている。・・・(中略)・・・他方、日本の手法は禅に根差していると言えるのではないだろうか。そこでは、学習の目的は修養にあるあるとされる。

・二〇世紀に得られた学習についての知見は全て、禅の発想が正しく、儒教あるいは欧米流の発想は真の学習を妨げることを示唆している。

・研修の主眼は常に、より新しい方法でよりよい仕事をすることにある。

 

2. 弾力的な人件費 ~ IBM

・日本の制度の主にどこにわたしたちの関心があるかというと、(1)雇用と収入の保障、(2)適応力の高い労働力と弾力性に富んだ人件費、という一見したところ矛盾する二つのニーズをどう満たしているのか、という点である。

三井財閥の大番頭(筆頭社員)は、ひとつの大きな仕事、すなわちマネジャーの育成、選抜、世代交代を担ってきたという。・・・(中略)・・・日本のマネジャーは終身雇用に守られ、原則として解雇、配置転換はない。しかも、入社後の二〇年間はもっぱら年功序列によって昇進する。だからこそ、若手への配慮や育成が経営トップの第一の務めになったのだ。

・日本の組織すべてに共通する短所は、派閥を形成することである。

・日本の組織は、軍隊を除く欧米のあらゆる組織と比べて、途方もなく独裁色が強い。・・・(中略)・・・にもかかわらず、トップダウンの威信は、ボトムアップの責任と常につり合いが取れている。・・・(中略)・・・組織のあらゆる階層において、部下たちも意思決定に加わり、その責任の一端を担うように期待される。

IBMの経営陣は、雇用を守るのが自分たちの務めだと心に決めた。そのためには、道はどう見てもひとつしかない。新しい市場を切り開くしかないのだ。

3. 教訓

・以上のようなサクセスストーリーの要点は何だろうか。日本企業、ツァイス、IBMの独自の取り組みは何か。そして他の企業が取り入れているにもかかわらず、これらの企業が避けている施策は何か。

・日本企業、ツァイス、IBMはいずれも、「懐の深いマネジメント」とは無縁である。

・これらは、「民主的なマネジメント」の具体例とは言いがたく、もとより「参加型民主主義」とはほど遠い。

・今日では「寛容さ」「参加型民主主義」などが、あたかも万能であるかのように唱えられており、労働と働き手のマネジメントにまつわる理論は、権限をいかにまとめ上げるかに力点を置いている。

・だが、日本企業のリーダーたち、ツァイスを率いたアッベ、IBMを率いたワトソン・シニアは、責任をまとめ上げることを通して、労働とその担い手をマネジメントした。

第2回 ドラッカー読書会を開催します!-2024年1月20日(土)

ドラッカーの名著「経営者の条件」を読み進めていきます。今回は「第2章❖汝の時間を知れ」です。成果を上げるための時間管理を中心に学んで行きます。

第2回 ドラッカー読書会

日時:2024年1月20日(土) 10:00〜12:00

場所:兵庫県西宮市北口町1番2号 ACTA西宮東館6階 西宮市大学交流センター(セミナー室1)

参加費:500円(ブログ経由)

定員:10名

*他媒体からも告知をしております。定員になり次第、締め切らせて頂きます。

 

○参加条件:
課題図書の指定範囲を読まれた上でご参加ください。


○課題図書:
ドラッカー名著集1 経営者の条件』(上田惇生訳,ダイヤモンド社
*今回の指定範囲は『第2章❖汝の時間を知れ』です。気になるところに線を引いたり付箋を張りご参加くださいね。

 

お申込み方法

○お申し込み:「Line公式」からお申し込みください。メッセージで「参加」と送ってくださいね。

「Line公式アカウント」⇒https://lin.ee/6cCx5qL

○参加特典①:第1回目で使用したレジュメをプレゼントさせて頂きます。

○参加特典②:ブログ経由でお申込みいただきますと、通常参加費の50%OFFで参加いただけます。

○参加特典③:当日に何も得るところがなければ、無料とさせていただきますね。

 

当日のアクセス

(1)阪急西宮北口駅の「北改札口」から外に出て、右に曲がる。

写真1

(2)しばらく直進し、アクタ西宮の東館が見える。

写真2

(3)6階に上がると「西宮市大学交流センター」に到着。

写真3

(4)第1回で使用した講義室の様子です。

写真4

ドラッカー・読書会を開催しました(2023年12月16日)

みなさまこんにちは。このような形でごあいさつするのも初めてですね。

ブログ執筆者の上田智之と申します。このような一部のマニアしか見ない特別な方々(どういう方だよ。笑)にドラッカー・読書会の実施報告です。

実施日と会場の様子

本日、12月16日にドラッカー・読書会を兵庫県で開催しました。

当初、このような超ニッチな分野で誰か来るんかな?とも思っていたのですが、勇気ある有志の方々で開催させて頂きました。各々のみなさま、お時間を頂き、本当にありがとうございました!

 

日時:2023年12月16日(土) 14:00~16:00

場所:西宮市大学交流センター 講義室3

使用テキスト:経営者の条件(P.F.ドラッカー

 

会場の様子ですが、めちゃくちゃキレイで驚きました。

入り口には電子看板が設置されており、気合が入ります。

そして講義室3。めちゃでかい。椅子、めちゃ座りやすい。

そして、本日使用した『経営者の条件』とレジュメ。

 

読書会の内容としては、以下の流れで2時間。あっという間でした・・・

➀「はじめに」「各章立て」の説明

②第1章の骨格とテクニカルタームドラッカーの言う「知識」の意味等)の説明

③読書時間(20分)

④各自、気になったところや心に響いたところの共有・フィードバック

⑤アンケート・感想の記入

⑥撤収・解散

 

ドラッカー・読書会アンケート(生の声)

私があーだこーだ言うよりも、アンケートに書いて頂いた生の声が以下です。(アンケート記載ママ)

ドラッカー読書会へ参加するきっかけは何ですか?

・経営者の考えていることを知りたかったから。(20代:男性)

ドラッカーの著作を本気で読んでみたかったから。(30代:男性)

・読書会に集まる人との交流。(30代:男性)

ドラッカーが好きだから。(40代:男性)

・近場でドラッカー読書会が実施されていなくて、企業主催のやつは営業されそう。(40代:男性)

 

ドラッカー読書会の良かった点を教えてください。

・所属組織の悪いところ・良いところを考えさせられた。(20代:男性)

・読んでいた感想を、率直に話してフィードバックがもらえて楽しい。(30代:男性)

・他の人の感じたところ、つっかかったところが知れて見識が深まる。(30代:男性)

・レジュメがわかりやすい。要点がまとまっている。(30代:男性)

・色々なことが知れた。ドラッカーとカントが結び付いて驚いた(40代:男性)

・自分だけの視点では見えないところや、業界が違っても同じような悩みを持っていたところを知れた。(40代:男性)

・レジュメが読みやすい。頭に入ってきやすい。(40代:男性)

 

③今回のドラッカー読書会の改善点を教えてください。

・個人の具体例と絡めて話し合う形式でできれば楽しみです。(20代:男性)

・前払いの有料でやる。(30代:男性)

・話すテーマを事前に決めてきた方が良いのではないか。(30代:男性)

・事前に全員が読書範囲は目を通した方が良いのではないか。(30代:男性)

・脳に汗をかきすぎました。(40代:男性)

 

④運営へのご意見・ご要望

・もっと人を集めて、楽しく有意義に長くやっていきたいですね。

 

こんな感じでした。総じて楽しんでいただいたようで主催者としてはホッとしました。

レジュメが良さそうですので、将来的にはLine公式から配布していきますね。

 

次回告知

次回:2024年1月20日(土)10:00~12:00実施予定。

指定範囲は「第2章❖汝の時間を知れ」です。

今回で解りました。次回は当日に何も得るところがなければ、無料の保証をつけますね。やる気満々ですので、こいつ↓で告知始めようと思います。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!



P.F.ドラッカー『マネジメント 第19章』【要約】

‐第19章 仕事と労働:その理論と現実 まとめ‐

仕事上の人間関係は互いの尊重の上に成り立たなくてはならず、その際、マネジャーは各種理論の正しさではなく「自分の状況には何が適しており、今の状況で自分はどのように仕事と部下をマネジメントすればよいのか」を問うべきである。昔ながらのアメとムチはもはや頼りにならない。新しい仕組みでは弱者なども想定して、命令や心遣いのような安心材料をも提供しなくてはならない。実際、このような組織は存在し、吟味することも可能である。

 

本章からの抜粋は以下とした。

1. X理論とY理論 ~ マズローによる批判

・X理論においては、人々は怠惰で働くのを嫌うため、アメとムチをうまく使い分けながら働かせなくてはいけない。・・・(中略)・・・対照的にY理論は、人間には働きたいという心理的な欲求があり、達成感や責任を求めている、との考えに基づく。

・しかし現実は、マグレガーの信奉者たちが主張しているよりも、あるいは信じているよりもはるかに複雑である。そもそも、Y理論は単独ではあまり意味をなさない。

・人間の本質については、何らかの理論を揚げれるほど多くの事柄がわかるかどうかは、いまだ不明である。これまでのところ、それができると納得するだけの根拠は全く得られていない。

 

2. マネジャーにとっての現実とは何か?~「大きな恐怖」と「小さな恐怖」

・X理論とY理論のどちらが科学的に妥当であるかを論じるのは、まったくむなしい。マネジャーが問うべきは、「人間の本質については、どちらの理論が正しいか」ではなく、「自分の状況にはどちらが適しており、今の状況で自分はどのように仕事と部下をマネジメントすればよいのか」である。

・重要な事実を述べよう。X理論にもとづく従来のマネジメント手法、すなわちアメとムチを使い分けるやり方は、もはやうまく機能しない。・・・(中略)・・・行動心理学の最新成果が示しているとおり、大きな恐怖は人々に何かを強制する力となるが、わずかな恐怖が残った場合、それは怒りや反発を生むだけである。

 

3. 効きすぎる「アメ」

・物質的な報酬というアメは、恐怖のムチとは違い、威力を保っている。それどころか、あまりに威力が強すぎるため、運用には慎重さが求めれらる。効きすぎてかえって頼りにしづらいのだ。

・仕事へのモチベーションを高めるのに必要な物的報酬は、等比級数的に増えていく宿命にある。・・・(中略)・・・経済的インセンティブは、報酬というより権利としての性格を強めている。

・収入が最低限の生活には困らない水準を上回ると、絶対額に対する不満よりも、相対的な収入への不満の方がはるかに強い感情として噴き出す。

 

4. アメとムチに代わるものはあるか?

・昔ながらのアメとムチに代わる新しい動機付け要因を探るのは、合理的であるばかりか心躍る取り組みだと思われる。このような新しい動機付け要因は、「心理面での啓蒙専制主義」としてすでにマネジャーに与えれれている。

・このような心理的統制のもとでは、命令に代えて説得が試みられる。説得に乗らない人は、おそらく病的、未熟、あるいは心理療法の必要あり、などという烙印を押されるであろう。

心理的圧政は、啓蒙的であろうとなかろうと、心理学の著しい乱用である。・・・(中略)・・・他者をコントロール、支配、操作するために心理学を駆使するのは、知識の乱用に当たり、自滅を招きかねない。専制の中でも、とりわけ激しい嫌悪を引き起こす形態でもある。

・仕事上の人間関係は互いの尊重の上に成り立っていなくてはいけない。ところが心理的圧政の底流には傲慢さがある。・・・(中略)・・・「マネジャーだけが健全で他は誰もが病んでいる」と想定している。・・・(中略)・・・これらはどれも、浅はかな傲慢さの表れである。

・では何がうまく機能するのだろうか?・・・(中略)・・・マネジャーは、仕事を成し遂げて働き手の達成意欲を満たすのが自分の務めだと、今以上に認識しなくてはいけない。・・・(中略)・・・アメとムチはもはや頼りにならない。新しい仕組みでは、弱者などを想定して、X理論における命令や心遣いのような安心材料をも提供しなくてはならない。

・このような組織はどういった姿をしているのだろうか?・・・(中略)・・・この種の組織は存在するし、じっくり吟味することが出来る。

読書会はじめました↓

ドラッカー・読書会 2023年12月16日(兵庫県) - こくちーずプロ

P.F.ドラッカー『マネジメント 第18章』【要約】

‐第18章 仕事の生産性を高める(2):管理とツール まとめ‐

プロセスを管理する必要はあるが「管理する対象は、仕事であって働き手ではない」という点を押さえること。管理は働き手のツールであり、ツールに働き手が使われるようなことがあってはならない。また、管理は「例外」をもとに行われ、フィードバックが生じるものでなくてはならない。最後に、ツールに関しても「この仕事を簡単にこなすための、最もシンプルで小型軽量のツールは何か」という問いを念頭に置き、生産性を高め、働き手の達成感を引き出すという条件を満たすものでなければならない。

 

本章からの抜粋は以下とした。

1. 仕事とプロセスの管理

・仕事とはプロセスであり、あらゆるプロセスは管理する必要がある。・・・(中略)・・・何よりも先に押さえておくべきは、「業務プロセスを管理する際の対象は、あくまでも仕事であって働き手ではない」という点である。管理は働き手のツールであり、働き手がツールに使われるような事態は、絶対にあってはならない。

・絶えず意識しておくべきだが、管理とは経済上の原則であり、倫理上の原則ではない。・・・(中略)・・・「プロセスを維持するためには、最小限、どれだけの管理が求められるか」こそ、適切な問いである。

・第二に管理とは、基本的に「例外」をもとに行われるものだ。標準から大きく外れた事象が起きた場合にだけ、管理の出番となる。

・第三に管理とは、すでに終わった仕事からのフィードバックをもとに行うものである。

・以上から、管理システムは、どこに管理手段を設けるべきか、その重要ポイントを示すものでなくてはいけないとわかる。これは技術上の判断というよりも、主としてマネジメント上の判断である。

2. 定型処理と例外処理 ~ 定型作業の三タイプ

・管理システムが対処できるのは定型的な業務だけである。例外の発生は検知できなくてはならないが、対処はできない。できるのは、プロセスそのものに支障が生じないようにするだけである。

・例外の発生を防ぐのは不可能だが、業務プロセスから取り除くことはできる。例外だけを個別に扱えばいいのだ。・・・(中略)・・・管理システムを設計するのは、何が定型で何が例外かをじっくり考える必要がある。

・定型作業の三タイプ

  1. 入力と出力が共に画一化された作業
  2. 表面的には多彩に見えるが、実際にはいくつかの定型作業が組み合わさったもの
  3. 独自性の高い案件を扱うプロセス(知識労働がこのタイプに属する。筆者追記)

3. 仕事とツール ~ 肉体労働を超えて

・仕事の生産性を高めるためには、締めくくりとして、それぞれの仕事に適した道具を選ばなくてはいけない。

・マネジャーが問うべきは、「この仕事を簡単にこなすための、最もシンプルで小型軽量のツールは何か」という問いを常々念頭に置くべきなのだ。

・第二の簡潔な決まりは、ツールは仕事をこなすためにある、というものだ。ツールのために仕事があるのではない。ツールはあくまでも生産に役立つために存在する。・・・(中略)・・・いずれにせよ、ツールはすべて人間のために存在する。このため、仕事の生産性を高め、働き手の達成感を引き出すという、二つの要素を満たさなくてはいけない。

・機械化は、適切に使いこなしさえすれば、常に人間の可能性を広げ、目的を達成するうえでの力になる。さもなければ、設計が誤っているのだ。

 

読書会はじめました↓

ドラッカー・読書会 2023年12月16日(兵庫県) - こくちーずプロ

P.F.ドラッカー『マネジメント 第17章』【要約】

‐第17章 仕事の生産性を高める(1):仕事とプロセス まとめ‐

働き手の労働意欲を満たす第一歩は、仕事の生産性を高めることである。仕事の生産性を高めるには「分析」「統合」「コントロール」「ツール」を用意するステップが必要とされる。また、多くの組織おいて、業務ごとに異なる生産原理を取り入れるのが望ましく、そのためにはマネジャーが直接、組織の業務と生産プロセスを分析しなくてはならない。併せて、生産の各基本原理とその特徴、限界、要件などを理解することも必須となる。

 

本章からの抜粋は以下とした。

1. 仕事そのものは変化しない

・仕事の生産性を高めるためには、「仕事の中身は普遍的で変化せず、技能や知識は仕事そのものではなく労働に宿っている」と理解しておくことが欠かせない。

・働き手の労働意欲を満たす第一歩としては、仕事の生産性を高めなくてはいけない。・・・(中略)・・・仕事の生産性を高めるには、四つのステップが必要とされ、そのそれぞれが異なる特徴と要件を備えている。

  1. 第一のステップは「分析」である
  2. 第二に「統合」というステップが欠かせない
  3. 第三のステップは「コントロール」である
  4. 第四に、適切な「ツール」を用意しなくてはならない

2. ステップ1:分析 ~ 一貫生産

・仕事を分析するにあたっては、何よりも先に次のように自問する必要がある。「何を生産しようとしているのか?」「そもそも何が仕事だろうか?」「最も容易に仕事を行い、生産性と効果を最大限に引き出すためには、最終成果物をどのように設計すればよいか?」

・最終成果の基本仕様は、作り手ではなく使い手のニーズや価値観に合わせて決めるのが筋だ。

・経営者は、仕事の分析と業務構造の分析とでは理屈がまったく異なることを、知っておくべきである。前者は仕事の、後者は労働の論理に従うのだ。

・これまでのところ、四つの生産原理が広く知られている。・・・(中略)・・・四つのシステムとは、(1)個別生産、(2)画一的な大量生産、(3)非画一的な大量生産、(4)一貫生産である。

・事業マネジメントにおいて心得ておくべき肝は以下の四つである。

  1. どのシステムを用いるべきかを見極める
  2. そのシステムの原則をできる限り守る
  3. 可能な箇所には、より先進的なシステムを取り入れる
  4. 各システムを運用するうえでのマネジメント要件を理解する

3. 各生産原理の要件

・生産組織が高度化すると、それにつれて将来に関わる意思決定の重みが増していく。

・多くの企業や公的機関においては、業務ごとに異なる生産原理を取り入れるのが望ましい。・・・(中略)・・・かりに、段階ごとに異なる原理を採用すべきと判断したなら、それぞれの段階を切り離し、互いの干渉を避けるよう努める必要がある。

・これは他社を模倣しただけでできるような仕事ではない。企業にせよ、公的機関にせよ、上層部が直々に組織の業務と生産プロセスを分析しなくてはならない。併せて、生産の各基本原理とその特徴、限界、要件などを理解することも欠かせない。

 

 

読書会はじめました↓

ドラッカー・読書会 2023年12月16日(兵庫県) - こくちーずプロ

P.F.ドラッカー『マネジメント 第16章』【要約】

‐第16章 仕事、労働、働き手についての知見 まとめ‐

労働には生理、心理、社会、経済、権力といった各種側面があるが、マネジャーは五つをまとめてマネジメントする必要がある。これらの諸側面のうちどれかひとつを唯一の特徴であるかのように論じるのは根本的な誤りである。また、その相互関係については現状の知識では十分ともいえない。しかし、マネジメントは目の前の課題であることから、➀解決策・妥協策を見出し仕事の生産性を高めること、②働き手の達成感を引き出すことに寄与する新しい原則を編み出す必要がある。

 

本章からの抜粋は以下とした。

1. 未熟な知識

・原子の昔から、仕事は人間の意識の中心にあった。・・・(中略)・・・体系的な研究が始まったのは一九世紀の末になってからである。・・・(中略)・・・テイラーの死後六〇年を経てもなお、大きな進展は生まれていない。

・他方で働き手は、仕事よりも低い注目に甘んじてきた。・・・(中略)・・・働き手についての記述はいくらでもあるが、体系的で真剣な研究は、労働のごくかぎられた側面についてしか行われていない。

・経営者やマネジャーの立場からすると、学者や専門家による研究を待っているわけにはいかない。働き手も同様である。マネジャーは日々、マネジメントを実践しなければならない。・・・(中略)・・・業務の生産性を高め、働き手に達成感を得させるよう、努力しなくてはならない。従って、仕事や労働についての知見を書き留めておくべきだろう。

2. 労働の五つの側面~第六の側面

・労働には少なくとも五つの側面があり、そのすべてにおいて、生産性を上げるためには達成感が欠かせない。

  1. 生理的側面:人間は機械のように仕事をするわけではない。
  2. 心理的側面:仕事をとおしていかに人間の心理的欲求を満たすか
  3. 社会的側面:仕事上でのつながりは、感情を求めなくても成り立つ
  4. 経済的側面:生計の手段。賃金水準は最終的には消費者によって決められる
  5. 権力的側面:権限は仕事に欠かせず、組織と切り離せない

・第6の側面として経済的分配についての権限を必要とする。

3. 際立った側面などというものは存在しない

・働き手の置かれた状況、仕事や職との関係、同僚やマネジャー層との関係においては、上記五つの側面絶えず併存しており、五つをまとめてマネジメントする必要がある。

・労働への従来のアプローチには、これらの諸側面のうちどれかひとつを唯一の特徴であるかのように論じるという、根本的な誤りがある。

・欲求が十分に満たされるにつれて、報酬としての意義、ひいては動機づけの力は急速に衰えていく。同時に、不満を引き起こし、やる気をそぐ可能性が見る見る大きくなっていく。

・労働の諸側面とその相互関係については、現状の知識では十分といえず、より多くを知る必要がある。それらの諸側面はあまりに複雑であり、分析しようがないのかもしれない。

・それでもなお、経営者にとってマネジメントは目の前の課題である。解決策、あるいはせめて妥協策を見出し、仕事の生産性を高めるとともに、働き手の達成感を引き出さなくてはならない。何が求められているかを理解しなくてはならない。

・新しいアプローチ、新しい原則、新しい手法を編み出す必要がある。それも今すぐに。

 

P.F.ドラッカー『マネジメント 第15章』【要約】

‐第15章 かつてない現実 まとめ‐

知識労働知識労働者の台頭等により、知識労働者の生産性の向上や達成感を満たすことが社会の中心的なテーマとなった。生産性を高めるのは、働き手自身による動機づけと方向性付けだけであり、達成意欲を持たない限り生産性は上がらない。そのため、知識労働者をマネジメントする際には、「過去のしがらみを断ち切るのではなく、将来に目を向け機会に焦点を合わせる」といった方針と慣習を設けることに力を注ぐことが必須となる。

 

本章からの抜粋は以下とした。

1. 仕事とその捉えどころのなさ ~ 労働組合の危機

・仕事と仕事をすることとは、異なるルールに従う。仕事はモノの領域に属し、人間とは無関係な独自の論理を持っている。他方、仕事をすることはヒト、つまり生き物の領域に属する。もっとも、マネジャーは常に仕事と働き手の両方をマネジメントしなくてはならない。仕事の生産性を高め、働き手の達成意欲を満たすのだ。

2. 知識労働者のマネジメント:新たな挑戦 ~ 労働者のセグメンテーション

知識労働者のマネジメントは、「過去」ではなく「現在と将来」に関わっている。これは根本的に新しい任務であり、肉体労働者のマネジメント以上に乏しい知識しかない。

・過去のしがらみを断ち切るのではなく、将来に目を向け、「厄介事」ではなく機会に焦点を合わせればよい。

・ごく初歩的な中身を別にすれば、知識労働者というのは、恐怖のもとでは生産性が上がらない。生産性を高めるのは、働き手自身による動機づけと方向性付けだけである。達成意欲を持たない限り、生産性が上がらない。・・・(中略)・・・これは新しい知識社会における中心的なテーマではないだろうか。

知識労働者の達成感を定義するのは、生産性の定義以上に難しい。仕事の中身、成果、社会的地位、誇りなどのうち何が自分に満足をもたらし、「自分は貢献している」「成果をあげている」「自分の理念に沿っている」「自己充足している」という実感につながるかという問いには、知識労働に携わる当人しか向き合えないのだ。

・業務の生産性を高め、とりわけ働き手の達成感を満たすためには、セグメントごとに異なる手法がますます必要となるだろう。

・仕事と働き手をマネジメントするうえでの主なテーマは、以下の三つに集約される。

  1. 雇い人を中心とした社会の到来
  2. 肉体労働者の心の持ち方(誇りを失う等、筆者追記)と、社会的地位の変容
  3. 知識労働知識労働者の台頭

3. 新時代の働き手

・仕事の仕組みと特徴が変容したため、純粋な経済面の便益だけでなく、それ以上の何かを仕事をとおして得たい、という要請が生まれた。

・カギを握るのは、豊かさよりもむしろ期待水準の向上である。従ってこれからは、仕事の生産性を高めることが、かつてなく重要になるだろう。・・・(中略)・・・(肉体労働者、知識労働者共に、筆者追記)物質面はさておき、心理面、社会面の満足をもたらしてくれるよう、仕事に期待している。必ずしも楽しくなくてもよいが、達成感につながってほしいと考えているのだ。

P.F.ドラッカー『マネジメント 第14章』【要約】

‐第14章 公的機関の成果を高めるマネジメント まとめ‐

公的機関の分類・ニーズ等がメインのため、教訓のみの抜粋とした。

 

【筆者追記】

第Ⅰ巻をまとめ終わりました。インスタント情報がもてはやされる中、完全逆行?の本サイトを見ていただきありがとうございます。第Ⅱ巻以降も引き続きよろしくお願いします。

1. 公的機関における効率原則 ~ 統治を担う公的機関

・公的機関はすべて・・・(中略)・・・第13で紹介した諸組織の経営者やトップと同じ規律を、自分たちに課さなくてはならないだろう。

 

  1. 「何が本分か、何を本分にすべきか」を見極める必要がある
  2. 明確な目標を導き出す
  3. 優先事項が何かを徹底的に検討する
  4. 成果の尺度を設ける
  5. これらの尺度をもとに取り組みへのフィードバックを行う
  6. 目的に合わなくなった目標、現実不可能になった目標を洗い出す。・・・(中略)・・・それらの活動を切り捨てるための仕組みを設け、不十分な成果しかあがらない分野に資金や労力を費やすのをやめる

 

・失敗を問い直すよりも、過去の成功体験を洗い流す方がはるかに難しい。

・求められるのは(人材ではなく、筆者追記)制度である。

・公的機関に求められるのは、よりよい人材ではない。むしろ、マネジメントの仕事を体系的にこなし、自身はもとより所属組織を、成果を重視する方向へと意識して導く人材こそが求められている。