P.F.ドラッカー『マネジメント 第15章』【要約】

‐第15章 かつてない現実 まとめ‐

知識労働知識労働者の台頭等により、知識労働者の生産性の向上や達成感を満たすことが社会の中心的なテーマとなった。生産性を高めるのは、働き手自身による動機づけと方向性付けだけであり、達成意欲を持たない限り生産性は上がらない。そのため、知識労働者をマネジメントする際には、「過去のしがらみを断ち切るのではなく、将来に目を向け機会に焦点を合わせる」といった方針と慣習を設けることに力を注ぐことが必須となる。

 

本章からの抜粋は以下とした。

1. 仕事とその捉えどころのなさ ~ 労働組合の危機

・仕事と仕事をすることとは、異なるルールに従う。仕事はモノの領域に属し、人間とは無関係な独自の論理を持っている。他方、仕事をすることはヒト、つまり生き物の領域に属する。もっとも、マネジャーは常に仕事と働き手の両方をマネジメントしなくてはならない。仕事の生産性を高め、働き手の達成意欲を満たすのだ。

2. 知識労働者のマネジメント:新たな挑戦 ~ 労働者のセグメンテーション

知識労働者のマネジメントは、「過去」ではなく「現在と将来」に関わっている。これは根本的に新しい任務であり、肉体労働者のマネジメント以上に乏しい知識しかない。

・過去のしがらみを断ち切るのではなく、将来に目を向け、「厄介事」ではなく機会に焦点を合わせればよい。

・ごく初歩的な中身を別にすれば、知識労働者というのは、恐怖のもとでは生産性が上がらない。生産性を高めるのは、働き手自身による動機づけと方向性付けだけである。達成意欲を持たない限り、生産性が上がらない。・・・(中略)・・・これは新しい知識社会における中心的なテーマではないだろうか。

知識労働者の達成感を定義するのは、生産性の定義以上に難しい。仕事の中身、成果、社会的地位、誇りなどのうち何が自分に満足をもたらし、「自分は貢献している」「成果をあげている」「自分の理念に沿っている」「自己充足している」という実感につながるかという問いには、知識労働に携わる当人しか向き合えないのだ。

・業務の生産性を高め、とりわけ働き手の達成感を満たすためには、セグメントごとに異なる手法がますます必要となるだろう。

・仕事と働き手をマネジメントするうえでの主なテーマは、以下の三つに集約される。

  1. 雇い人を中心とした社会の到来
  2. 肉体労働者の心の持ち方(誇りを失う等、筆者追記)と、社会的地位の変容
  3. 知識労働知識労働者の台頭

3. 新時代の働き手

・仕事の仕組みと特徴が変容したため、純粋な経済面の便益だけでなく、それ以上の何かを仕事をとおして得たい、という要請が生まれた。

・カギを握るのは、豊かさよりもむしろ期待水準の向上である。従ってこれからは、仕事の生産性を高めることが、かつてなく重要になるだろう。・・・(中略)・・・(肉体労働者、知識労働者共に、筆者追記)物質面はさておき、心理面、社会面の満足をもたらしてくれるよう、仕事に期待している。必ずしも楽しくなくてもよいが、達成感につながってほしいと考えているのだ。