P.F.ドラッカー『マネジメント 第3章』【要約】

‐第3章 新たなる挑戦 まとめ‐

マネジメントは経済や社会を発展させる。一国の発展を成し遂げるうえでは、人間の活力や熱意が重要であり、それらを生み出し方向づけを行うのもマネジメントの務めである。また、多元化する社会のニーズを事業機会にするため、知識労働者の個人ニーズに合わせた組織づくりをすることや、新しい組織の生産性を引き出し組織を個人・地域共同体・社会の役に立てるようにすることが次世代の務めでもあり、何よりもまずマネジメントの務めでもある。

 

本章からの抜粋は以下とした。

1. 概念的土台~基礎分野における新しい知識の必要性

・マネジメント・ブームは七つの概念をよりどころとしていた。

  1. 科学的管理法
  2. 分権制
  3. 人材管理
  4. マネジャー育成
  5. 管理関係
  6. マーケティング
  7. 長期プランニング

・マネジメント・ブームは上記の精緻化、追加、修正といった作用は果たしたが、創造の役割はほとんど果たしていない。

・必要なのは、生産の原理を理解し、すべての作業を結びつけて、生産性が最大化するプロセスを生み出すことである。

2. 分権制を超えて~多彩な組織のマネジメント

・分権制は、事業の進め方が固まっている場合に最適だ、ということも分かっている。この仕組みは、業務革新を進める組織の要求に応えるものではないのだ。経営陣を支える組織としても、単独では力不足である。

・人材を枠にはめ込むのではなく、率いていくことを学ばなくてはいけないのだ。・・・(中略)・・・人材を頭痛の種、コスト、火種などとしてではなく、資源や機会として見ることを学ばなくてはいけない。管理するよりも率いる、統制するよりも指示を出す、ということを覚えなくてはいけない。

・経営者は、起業家らしさを発揮して、革新的な組織を築いて舵取りする術を身につけなくてはならない。

・企業や経営者が社会を変革しようとするうえでは、以上のようなニーズ(発展、大都市、環境、教育・医療分野での生産性向上ニーズ)すべてが事業機会となる。

3. 知識と知識労働者~国や文化をまたがるマネジメント

・これから数十年間、知識の生産性を押し上げることが、先進国のマネジメントにとって第一の務めとなるだろう。

・ひとつ明確な点がある。知識から生産性を引き出そうとすると、仕事の仕組みや、雇用や昇進、組織のあり方をおおもとから変えることになる。・・・(中略)・・・知識労働者に高い生産性を発揮してもらうためには、正規の高等教育を受けて社会に出た人に最初に与える仕事についても、根本から見直す必要がある。

知識労働者においては実践とプランニングが分かちがたく結びついている一方、自分自身でプランニングを行う力も必須である。

・企業マネジメントには国際性が求められる。経済面に着目すると、世界、とりわけ先進国では市場の融合が進んでいる。

・マネジメントについては次のように捉えるべきだろう。これは科学と同時に人間についての学問分野である。客観的に検証可能な事実の表明であると同時に、信条や考え、見聞などをまとめたものである。

4. マネジメントと生活の質

・組織は社会における重要性を急速に高めているため、企業を含むあらゆる組織は、生活の質に責任を負わなくてはいけないだろう。・・・(中略)・・・企業は、生活の質の向上を事業機会と捉え、利益の源泉にしなくてはいけないのだ。

・組織の要請に個人を従わせる手段としてマネジャー育成に関心を寄せる傾向は、これから一〇年のあいだにすっかり影を潜め、個人のニーズ、願い、可能性などに合った組織づくりをするためにいかにマネジメントを向上させるかという関心が、飛躍的に高まるのではないだろうか。

・発展を成し遂げるうえでは、経済的な富よりもむしろ人間の活力や熱意が重要になる。それらを生み出し、方向づけを行うのはマネジメントの務めである。

・先進国では今後、マネジャーの成果、能力、真剣さ、理念が、社会の期待や理念、そして生き残りまでも左右すると考えられるのだ。多元化する社会において、新しい組織の生産性を引き出し、個人、地域共同体、社会の役に立てるようにすることが、次世代の務めである。そして、これは何よりもまず、マネジメントの務めなのだ。