P.F.ドラッカー『マネジメント 第4章』【要約】

‐第4章 マネジメントの諸側面 まとめ‐

マネジメントの職務は自己充足的なものではなく、果たすべき務めによって決まり形作られる。企業の使命、目的、戦略を理解しない限り、マネジメントの職務は実り多いものにはならない。企業は人間の寿命や世代を超えて、経済や社会への貢献を続けなければならない以上、時間軸を考慮に入れたうえで、既存事業の改善を加えるのと並行して新規事業をも手掛ける必要がある。マネジメント層が組織をうまく舵取りし、貢献へと導くには以下の務めを果たさなければならない。

(1)組織の具体的な目的とミッションを果たす

(2)業務の生産性を上げ、働き手に達成感を得させる

(3)社会への影響に対処し、社会的責任を果たす

 

本章からの抜粋は以下とした。

1. マネジメントは組織の一部~社会への影響に対処し、社会的責任を果たす

・企業は、公的機関ともども、社会の一役を担っている。・・・(中略)・・・目的ではなく、手段なのである。

・マネジメント層が組織をうまく舵取りし、貢献へと導くためには、三つの務めを果たさなくてはならない。

  1. 組織の具体的な目的とミッションを果たす
  2. 業務の生産性を上げ、働き手に達成感を得させる
  3. 社会への影響に対処し、社会的責任を果たす

・企業においては経済活動は存在理由であり目的である。・・・(中略)・・・企業マネジメントは、どのような判断や行動においても常に、経済活動を第一に据えなくてはならない。・・・(中略)・・・企業マネジメントの第一の定義は「社会、とりわけ産業社会を構成し、その中で経済活動を行う存在」である。

・どの組織にとっても、真の意味での資源と呼べるのは人材だけであり、成果をあげるには人的資本から生産性を引き出すほかない。・・・(中略)・・・「業務と働き手のマネジメントに失敗しても、業績はあげられる」との考えは幻想にすぎず、それどころか、ごく短い期間だけを見ても、資源を消耗させる。

・企業を活性化させるのは、経営者の役割である。

・企業が存在するのは、一般の働き手やマネジャーに職を提供するためでも、まして株主に配当を支払うためでもなく、顧客に財やサービスを提供するためである。

2. 時間軸

・時間軸はマネジメントに本来備わったものである。というのも、マネジメントは行動に向けて判断を下さなくてはならず、行動は常に、いずれ結果を出すことを目指している。

・将来について分かっているのはただひとつ、現在と同じではないだろう、という点だけだ。

・時間軸のおかげで、マネジメントの意思決定には特別な性質が備わっている。現在と将来の橋渡し役としての性質である。

3. 既存事業の遂行と新規事業の開拓

・勝手の分かった既存事業をマネジメントし、改善を加えるのと並行して、新規事業をも手掛ける必要がある。・・・(中略)・・・経営資源を配分しなおすのだ。過去からの脱皮を少しずつ図り、慣れ親しんだ旧事業のしがらみを断ち切るとともに、明日を切り開かなくてはならない。

経営資源を最適化するには、(効率ではなく)効果に着目すべきだ。・・・(中略)・・・効果が成功の土台であるのに対して、効率は、成功を遂げた後に生き残っていくための最低限の条件なのだ。

・マネジメントには将来の事業を切り開くという務めが本来的に伴い、こちらはおのずとイノベーションを必要とする。将来の事業を切り開くための原点は、「事業は現在と将来で異なり、またそうでなくてはいけない」という確信にある。

・企業が新規事業を開拓するとは、厳密には、現行の事業をとおして将来への備えを進め、新しい事業への脱皮を図る態勢を整える、という意味である。既存事業、とりわけ成果の上がっている事業を続けながら、将来の繁栄への基礎を作るのが、新規事業を開拓する本旨である。

・企業は人間の寿命を超え、世代を超えて、経済や社会への貢献をつづけなければならない。

4. 経営者の仕事

・マネジメントというツールを用いて、マネジャーを管理するという業務を果たさなくてはいけない。

・経営者は、業務を果たすための手段にも注意を払わなくてはいけない。マネジメントという職務、経営者の仕事、必要な技能、組織などに心を砕かなくてはいけないのだ。

・企業の使命、目的、戦略を理解しない限り、マネジャーの管理も組織の設計もできず、マネジメントの職務を実り多いものになどしようがない。