‐第16章 仕事、労働、働き手についての知見 まとめ‐
労働には生理、心理、社会、経済、権力といった各種側面があるが、マネジャーは五つをまとめてマネジメントする必要がある。これらの諸側面のうちどれかひとつを唯一の特徴であるかのように論じるのは根本的な誤りである。また、その相互関係については現状の知識では十分ともいえない。しかし、マネジメントは目の前の課題であることから、➀解決策・妥協策を見出し仕事の生産性を高めること、②働き手の達成感を引き出すことに寄与する新しい原則を編み出す必要がある。
本章からの抜粋は以下とした。
1. 未熟な知識
・原子の昔から、仕事は人間の意識の中心にあった。・・・(中略)・・・体系的な研究が始まったのは一九世紀の末になってからである。・・・(中略)・・・テイラーの死後六〇年を経てもなお、大きな進展は生まれていない。
・他方で働き手は、仕事よりも低い注目に甘んじてきた。・・・(中略)・・・働き手についての記述はいくらでもあるが、体系的で真剣な研究は、労働のごくかぎられた側面についてしか行われていない。
・経営者やマネジャーの立場からすると、学者や専門家による研究を待っているわけにはいかない。働き手も同様である。マネジャーは日々、マネジメントを実践しなければならない。・・・(中略)・・・業務の生産性を高め、働き手に達成感を得させるよう、努力しなくてはならない。従って、仕事や労働についての知見を書き留めておくべきだろう。
2. 労働の五つの側面~第六の側面
・労働には少なくとも五つの側面があり、そのすべてにおいて、生産性を上げるためには達成感が欠かせない。
- 生理的側面:人間は機械のように仕事をするわけではない。
- 心理的側面:仕事をとおしていかに人間の心理的欲求を満たすか
- 社会的側面:仕事上でのつながりは、感情を求めなくても成り立つ
- 経済的側面:生計の手段。賃金水準は最終的には消費者によって決められる
- 権力的側面:権限は仕事に欠かせず、組織と切り離せない
・第6の側面として経済的分配についての権限を必要とする。
3. 際立った側面などというものは存在しない
・働き手の置かれた状況、仕事や職との関係、同僚やマネジャー層との関係においては、上記五つの側面絶えず併存しており、五つをまとめてマネジメントする必要がある。
・労働への従来のアプローチには、これらの諸側面のうちどれかひとつを唯一の特徴であるかのように論じるという、根本的な誤りがある。
・欲求が十分に満たされるにつれて、報酬としての意義、ひいては動機づけの力は急速に衰えていく。同時に、不満を引き起こし、やる気をそぐ可能性が見る見る大きくなっていく。
・労働の諸側面とその相互関係については、現状の知識では十分といえず、より多くを知る必要がある。それらの諸側面はあまりに複雑であり、分析しようがないのかもしれない。
・それでもなお、経営者にとってマネジメントは目の前の課題である。解決策、あるいはせめて妥協策を見出し、仕事の生産性を高めるとともに、働き手の達成感を引き出さなくてはならない。何が求められているかを理解しなくてはならない。
・新しいアプローチ、新しい原則、新しい手法を編み出す必要がある。それも今すぐに。