P.F.ドラッカー『マネジメント 第22章』【要約】

‐第22章 雇用、収入、福利厚生 まとめ‐

働き手が責任を引き受けるうえでは、雇用と収入がかなりの程度まで安定している必要がある。また、福利厚生は企業の収益性と働き手のニーズをうまく結びつけることのできる分野でもあり、経営層は従業員の福利厚生に責任を負わなくてはいけない。求められる福利厚生制度は以下の四点に考慮すること。

  1. 従業員に対する、費用対効果が最も大きくなるように便益を与えること
  2. 最低給付水準を決めておくこと
  3. 福利厚生全体の負担金額を決め、その枠内で従業員のニーズに合った給付をいくつか組み合わせること
  4. 福利厚生制度の運用は職場コミュニティに委ねること

 

本章からの抜粋は以下。

1. 雇用の保障と収入の安定 ~ 体系的な就職・転職支援の必要性

・働き手が責任を引き受けるうえでは、雇用と収入がかなりの程度まで安定している必要がある。・・・(中略)・・・ところが、経営層はおおむね、雇用、収入、福利厚生のマネジメントを怠ってきた。受け身で対応してきたにすぎない。だが、本来、これらの責任はまさに経営層が果たすべきである。マネジメントの務めなのだ。

・生産性の向上やイノベーションに抵抗するのは、職を失うという不安だけが理由ではない。誰かが高い達成意欲を示すと、そのせいで他の者が職からあぶれるのではないか、という不安も働いており、これも見逃せない要因である。

・法律あるいは制度の上で雇用や収入を保障しても、それだけでは十分ではない。働き手に安心して責任を引き受けてもらうためには約束に現実味が伴っている必要があるのだ。

・今も求められるのは、第一に、保障がなされているという事実を、納得を引き出す形で明快に示すことであり・・・(中略)・・・第二に、経済、企業、就労者は人材の流動性を求めており、これを手当てしなくてはならない。

 

2. 利益、生産性、福利厚生 ~ 福利厚生のあるべき姿とは

・福利厚生こそ、企業の収益性と働き手のニーズをうまく結びつけることのできる分野である。

・本当に求められるのは、会社の利益や生産性に応じて、年ごとに給付の内容を変動させる制度である。

・大多数の企業では、福利厚生は給与・賃金と原材料に次いで三番目に大きな費目となっている。にもかかわらず・・・(中略)・・・福利厚生全体としてのマネジメントは手薄である。

・福利厚生のあるべき姿については、以下のように具体的にまとめることが出来る。

  1. 受益者である従業員に対して、費用対効果が最も大きくなるように便益を与えるべきである。
  2. 最低給付水準を決めておく必要がある。
  3. プランごとに拠出額を決めるよりも、福利厚生全体の負担金額を決め、その枠内で従業員の層別に、ニーズに合った給付をいくつか組み合わせて提供した方がよい。
  4. 福利厚生制度の運用は、できるかぎり職場コミュニティに委ねるのが望ましい。

・人件費に占める福利厚生費の比率は、定価ではなく上昇する可能性が大きい。・・・(中略)・・・このため、経営層は従業員の福利厚生に責任を負わなくてはいけない。

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