P.F.ドラッカー『マネジメント 第12章』【要約】

‐第12章 公的機関はなぜ成果を生まないのか まとめ‐

予算型組織にとっては、より多くの予算を獲得すれば成果を出したことになる。予算をどれだけ獲得できるかで活動ぶりを見極めようとする姿勢は効率とは相いれず、事業の目的を明確にしづらいことも伴って、効果は効率以上に怪しくなる。また、公的機関は全ての関係者の理解を得なくてはならないことより、特定の分野に資源を集中できず、成果を生み出せていない。

 

本章からの抜粋は以下とした。

1. 三つの通説

・公的機関が成果を生まない理由としては、以下の三つがしばしば指摘される。

  1. 上層部にビジネス感覚が欠けている
  2. よりよい人材が求められている
  3. 目標と結果が目に見えない

・これら三つはいずれも説明というよりも言い訳に過ぎない。・・・(中略)・・・公的機関が成果をあげられないのは、まさに企業でないからに他ならない。

・「公的機関が必要とするのはよりよい人材だ」という議論にさして根拠がないことは、フランス政府を見ればいっそう納得がいく。・・・(中略)・・・欠点は人材ではなく制度にある。

・一見したところ、一番もっともらしいのは、「公的機関の目標は、結果と同じく目に見えない」というものだ。これはどう贔屓目にみても、真実の一面だけにすぎない。「自分たちの本分は何か」は、公的機関にとどまらず企業にとっても、常に目に見えない。

 

2. 予算がもたらす誤り ~ 稼いだ収入vs当然の収入

・予算頼みの組織にとっては、より多くの予算を獲得すれば成果を出したことになる。活動ぶりとは、予算枠を維持したり、増やしたりする手腕を指す。・・・(中略)・・・そして、予算とは本来、貢献ではなく、意思を反映して決まる。

・予算をどれだけ獲得できるかで活動ぶりを見極めようとする姿勢は、効率とは相いれない。・・・(中略)・・・低コストと高効率を心掛けたりしたら、かえってやぶ蛇になりかねない。このため彼らは常に予算の獲得に走る。・・・(中略)・・・だが、予算配分に依存すると、効果は効率以上に怪しくなる。

・「何を事業にすべきか」などという問いを抱くと、自分たちの墓穴を掘りかねない。この問いは必ず意見が分かれる。論争をすると、えてして味方が減るため、予算型組織は論争を避けるだろう。

・予算に依存すると、優先順位をつけたり、特定の分野に努力を集中したりすることができなくなる。だが、貴重な資源を少数の優先事項に集中的に投入しない限り、何も達成されない。

・予算を獲得するためには、広い意味での利害関係者ほぼすべてから賞賛を受けるか、せめて黙認してもらう必要がある。・・・(中略)・・・公的機関は特定の分野に集中できないのである。すべての関係者の理解を得なくてはならないのだ。

・他のすべての組織と同じく政府にとっても、今日の適切なルールは、「活動はすべて永遠に続けるものだ」ではなく、「現在の活動はみな、数年後には廃止が検討される可能性が高い」である。

・予算配分は、どれだけ必要とされていても、それどころか望まれていたとしても、組織を誤った方向へと導く。多くの場合、いやほとんどの場合、これをなくすわけにはいかない。ただし、範囲を絞ったり、影響を和らげたり、欠点を大きく補ったりすることはできる。