P.F.ドラッカー『マネジメント 第10章』【要約】

‐第10章 戦略的プランニング:起業家的な技能 まとめ‐

プランニングの本質は、将来についての知識をもとに現時点で判断を下すことにある。リスクを伴う意思決定をするかしないかについては、経営陣には選択の余地はなく、経営者である以上は当然の役割と認識すること。戦略的プランニングの狙い現時点で行動を起こすことにあり、以下の要点を遵守すること。

  1. 目標の達成に向けて、計画的に決然と仕事をすること
  2. 過去と決別すること
  3. 「従来と同じ取り組みに、よりいっそう注力すれば十分だ」ではなく、目標の達成に向けて、これまでと違った新しい試みを探求すること
  4. 時間軸についてじっくり考える。「必要な時期までに結果を出すためには、いつの時点で着手しなくてはいけないか」と自問すること

本章からの抜粋は以下とした。

1. 長期的プランニングの普及

・長期的プランニングはこの二〇年間、凄まじい勢いで普及してきた・・・(中略)・・・経営者は、将来にわたる判断を体系的に下す技能が必要とされる。

・経営陣には、未来を予測し、将来を切り開こうと試み、短期と長期のゴールを調和させる以外、選択肢がない。

・未来は、強く願っても切り開けるとは限らない。現時点で判断を下さなくてはいけない。現時点でリスクを取り、行動を起こす必要がある。経営資源、何よりも人的資源を割り振り、今すぐにでも仕事を始めなくてはならい。

・長期プランニングは、①現在のトレンドがそのまま続くと思い込む、②製品、サービス、市場、技術などはこれからも変わらないと仮定する、そして何より、③過去にしがみつくために経営資源や努力を傾注する、といった誤りを防ぐものでなくてはいけない。

2. 長期プランニングに含まれないもの

・長期プランニングに含まれないものが何かを、ぜひ知っておくべきである。

  1. 技巧を寄せ集めたものではない。・・・(中略)・・・手法ではなく、責任である。
  2. 予測ではない。将来を思いのままにするわけではない。そのような試みは愚かしい。・・・(中略)・・・戦略的プランニングが必要なのは、まさに予測は不可能だからである。
  3. 将来の判断は扱わない。将来を念頭に置きながら、現在の判断を下すのである。判断は、現在の判断でしかありえない。・・・(中略)・・・「不確実な明日に備えるために、今、何をなすべきなのか」なのだ。
  4. リスクを取り除く試みではない。リスクを最小化しようとの試みですらない。・・・(中略)・・・経済活動とは本来、将来、つまりきわめて不確実な期待のために、現在の経営資源を投じる活動である。

3. 戦略的プランニングとは何か~過去との決別

・戦略的プランニングとは、以下のたゆみないプロセスである。

  1. 将来についての知識を総動員してその時々における起業家的な判断を下し、
  2. その判断を実行するのに必要な努力を組織的に行い、
  3. 判断の結果を、秩序だったフィードバックをもとに期待に照らしながら測定する

・将来を自分たちのものにするためには、まずなすべきは、過去との決別である。・・・(中略)・・・過去との計画的な決別も、それ自体がプランであり、多くの企業にとってふさわしいといえる。・・・(中略)・・・企業の長期プランは、過去との決別に決して触れようとしない。役に立たないのは、おそらくそのせいだろう。

4. いつ、どのような新施策に取り組むべきか

・次のステップでは、「いつ、どのような新施策に取り組むべきか」と自問することになる。・・・(中略)・・・どのプランにおいても「すでに取り組んでいる事柄は、将来のニーズには決してふさわしくない」という前提を置いた方が賢明だと考えられる。

・プランニングの本質は、将来についての知識をもとに、現時点で判断を下すことである。時間軸を決定づけるのは将来の状況であり、その逆ではない。・・・(中略)・・・二〇年以上先に何かを期待しても、現在価値はゼロにひとしいため、当面は最小限の努力と資源を傾けることにとどめておくべきである。

・時間軸の決定そのものが、プランニング・プロセスにおけるリスクを伴う決定なのだ。

・戦略的プランニングの肝要な事項をまとめておきたい。

  1. 目標の達成に向けて、計画的に、決然と仕事をする。
  2. 第一歩として過去と決別すべきである。
  3. 「従来と同じ取り組みに、よりいっそう注力すれば十分だ」と思い込まずに、目標の達成に向けて、これまでと違った新しい試みを探求する。
  4. 最後に、時間軸についてじっくり考え、「必要な時期までに結果を出すためには、いつの時点で着手しなくてはいけないか」と自問する。

5. すべてを具体的な業務に落とし込む

・プランの真価は、将来的に結果を生みそうな行動に対して、経営陣が実際に経営資源を充てるかどうかで決まる。このような関与がなされない限り、謳い文句や希望的観測にすぎず、プランとは呼べない。

・「今のところは、一線級の人材を充てる余裕はありません。現在の・・・(中略)・・・」。このような経営者は、実はプランなど持っていないと告白しているのも同然である。

・何をどのように測定するかによって、何を適切と考えるか、ひいては何に注目し、何を行うかが決まるため、結果の測定はプランニング・プロセスにおいてこの上なく重要なのだ。

・遠い将来に向けて、リスクを伴う意思決定をするかしないかについては、経営陣には選択の余地はない。経営者である以上、そのような意思決定をするのは当然の役割なのだ。

・最終的な成果は、知識ではなく戦略でなくてはいけない。その狙いは、現時点で行動を起こすことである。・・・(中略)、、・・・プランニングを組織的に行い、そこに知識を注入すれば、経営者の判断、リーダーシップ、ビジョンなどは、いっそう威力を増すだろう。