P.F.ドラッカー『マネジメント 第25章』【要約】

-第25章 社会への影響と社会的責任 まとめ-

現代の組織は社会に具体的に奉仕するために存在している。自分たちがまわりに影響を及ぼしたなら、それが意図の有無に関わらず、経営層は責任を負わなくてはならない。また、社会問題は国を退化させるおそれのある、ある種の病ではあるが、これは事業機会でもある。「問題の解決を事業機会につなげるには、どうすればいいか」と自問自答すること。つまり、変化をイノベーション、つまり新しいビジネスへとつなげることもマネジメントの務めである。

 

本章からの抜粋は以下とした。

1. 影響への責任 ~ 社会的影響への責任

・組織はみな、二種類の責任を負う。ひとつは、組織そのものが社会に与える影響から生じる責任。もうひとつは、社会が抱える矛盾から生じる責任である。

・現代の組織は、社会に具体的に奉仕するために存在している。このため、社会に身を置いている必要がある。

・社会が病んでいては、企業も、大学も、病院も健全ではいられない。たとえ、社会の病根が自分たちとはいっさい関係がなかったとしても、社会を健全な方向へ導くことが、経営層の自己利益につながる。

・自分たちがまわりに影響を及ぼしたなら、それが意図したものであろうとなかろうと、やはり責任を負わなくてはならない。組織が社会に与える影響に関して、経営層には確実に責任がある。それに対処するのが経営層の務めである。

・企業は、自分たちが社会に及ぼす影響に責任があるのだから、それを最小限に抑えようとするのは当然だろう。

・「世の中は反対していない」という理屈は通らない。まして、問題に取り組むための方策は受けが悪そうだ、同僚たちから反対されそうだ、要求を受けていない、などというのは十分な弁明にならない。いずれ社会は、組織の影響を、自分たちを脅かす敵とみなすだろう。

2. 社会への影響を見極める ~ 影響にどう対処すべきか

・組織の上層部はまず、現実的な視点から冷静に社会への影響を見極め、予測しなくてはいけない。「われわれの行いは正しいのだろうか」ではなく、「社会や顧客が支払う対価に見合った行いをしているだろうか」と自問自答しなくてはいけない。

・「新しい技術の影響は見通すことが出来る」などと思い違いをすると、本当に大切な仕事を軽んじかねないという、深刻な危険がある。

・最初の第一歩は、組織が意図せずに社会に与える影響を見極めることだ。そのためには、どのような手法があるのだろうか。目標ははっきりしている。社会、経済、地域、個人への影響のうち、組織の目的や使命から外れたものは最小限にとどめ、できればなくすべきである。

・原因となる活動をやめれば影響が消えるのなら、活動をやめるのが最善の解決策、いや、本当の意味で望ましいただひとつの解決策である。

3. 規制が必要とされる局面 ~ トレードオフ

・自社の影響を取り除き、それを事業機会に変える取り組みは、常に行われるべきである。ただし、それができないケースも多い。・・・(中略)・・・これに対処するためには、ほとんどの場合、規制、つまり何らかの公的措置を導入するほかない。

・企業だけでなくあらゆる組織の上層部は、この責任を避けてきた。これまで一貫して、「規制はないに越したことはない」という考え方が主流だったのだ。しかし、これが当てはまるのは、組織の影響を事業機会に変えられる場合だけである。

・費用と便益のバランスが最適になるように、判断を下さなくてはいけない。産業界に身を置く人なら、たいていはこの点を理解している。しかし、産業界の外では誰もこれを理解しておらず、トレードオフを度外視した解決策を考えがちである。

・社会への影響には、経営層が責任を負わなくてはいけない。とはいっても、それが社会的な責任だからではない。事業場の責任だからである。

4. 社会問題の中に事業機会を見出す

・社会問題はいわば機能不全であり、国を退化させるおそれがある。ある種の病なのだ。ところが、組織、とりわけ企業の上層部にとっては、これは事業機会でもある。

・変化をイノベーション、つまり新しいビジネスへとつなげるのが、企業の仕事である。

・社会問題の解決をとおして事業機会を生み、そこから成果や貢献を引き出す試みは、決して企業だけに限られるものではない。組織を柱としたこの社会においては、これはあらゆる組織の責任なのである。

・正しい解決策はどれも、後から見れば「当然」なのだ。重要なのは、これらの人物とその会社が大きな社会問題に目を留め、「問題の解決を事業機会につなげるには、どうすればいいか」と自問自答したという事実である。

5. 社会の「退行性疾患」

・社会問題も、マネジメント活動をとおして事業機会に変えれば、そぐに問題ではなくなる。ただ、手つかずのまま放置すると、不満はいつまでもくすぶり、悪くすると「退行性疾患」を招く。

・では、社会問題が慢性化したり、社会を蝕んだりした場合、経営層はどのような社会的責任を負うのだろうか。これらはマネジメント上の問題であり、企業を健全に保つのは経営層の責任である。

・「目を逸らしていれば、そのうちに問題は解決するだろう」などと期待するのは、馬鹿げている。誰かが行動を起こさないかぎり、問題は解決しない。

ドラッカー読書会やってます▼

第3回 ドラッカー・読書会 in 兵庫 2024年2月17日(兵庫県) - こくちーずプロ