‐第6章 意思決定とは何か まとめ‐
エグゼクティブは組織や業績に重要な影響を及ぼす意思決定を行うことが期待されており、意思決定が特別な扱いを受ける理由となる。意思決定は重要な問題に集中し、最高の概念水準でかつ戦略的に行うことを意識する。意思決定の五つのステップは以下となる。
(1)問題の種類を知る
(2)必要条件を明確にする
(3)何が正しいかを知る
(4)行動に変える
(5)フィードバックを行う
本章からの抜粋は以下とした。
1. エグゼクティブ特有の仕事
・成果をあげるエグゼクティブを論ずるにあたって、意思決定は特別の扱いを受けるに値する。組織や組織の業績に対して重大な影響を及ぼすような意思決定を行うことを期待されている者こそエグゼクティブである。
・成果をあげるには意思決定の数を多くしてはならない。重要な意思決定に集中しなければならない。
2. 二つの事例
・ヴェイルとスローンの意思決定は、いくつかの重要な共通点を持っていた。すなわちそれらの意思決定は、すべて最高の概念水準において問題と取り組んでいた。
・それらはすべてその時々の個々のニーズに対する対応としてではなく、戦略的な意思決定として取り組まれていた。
・それらの意思決定はすべて社会的なイノベーションをもたらすものだった。いずれも基本的な議論を引き起こすものだった。当時誰もが知っていたことと正面から対立するものだった。
3. 意思決定の要因
成果をあげるうえで必要とされる意思決定の五つのステップは以下の通り。
(1)問題の種類を知る
・一般的な問題か例外的な問題か、何度も起こることか個別に対処すべき特殊なことかを問わなくてはならない。基本的な問題は、原則と手順を通じて解決しなければならない。
・真に例外的な問題を除き、あらゆるケースが基本の理解に基づく解決策を必要とする。一度正しい基本を得るならば、同じ状況から発する問題はすべて実務的に処理できる。
【問題の種類】
- 基本的な問題の兆候に過ぎない問題①
- 当事者にとっては例外的だが実際には基本的、一般的な問題②
- 真に例外的で特殊な問題③
- 何か新しい種類の基本的、一般的な問題の最初の表れとしての問題④
(筆者解説)
並列で並んでいるようで、細かく読めば段階がありますね、これ。
まず、「基本的な問題①」か「特殊な問題」かに分類する。
次に、本人にとっては「特殊な問題」でも、「世間一般にはよくあること」なのか(上記②)、「世間一般にない、世の中に存在しない」ことなのかに分類する。
最後に、「世間一般にない、世の中に存在しない」ことであっても、「何か新しい種類の基本的、一般的な問題の最初の表れ④」なのか「真に例外的で特殊な問題③」なのかに分類する。①②④は原則と手順で解決する。
*言葉の抽象度を合わせないとごちゃごちゃして、迷子になりますね、この部分。
・意思決定の成果をあげるには、まず時間をかけ、問題が四種類のいずれであるかを知らなければならない。
(2)必要条件を明確にする
・決定の目的は何か、達成すべき目標は何か、満足させるべき必要条件は何かを明らかにしなければならない。必要条件を簡潔かつ明確にするほど決定による成果はあがり、達成しようとするものを達成する可能性が高まる。
・必要条件は、「この問題を解決するために最低限必要なことは何か」を考え抜くことによって明らかとなる。
・必要条件を理解しておくことは、最も危険な決定、すなわち都合の悪いことが起こらなければうまくいくという種類の決定を識別するためにも必要である。
(3)何が正しいかを知る
・決定においては何が正しいかを考えなければならない。やがては妥協が必要になるからこそ、誰が正しいか、何が受け入れやすいかという観点からスタートしてはならない。
・何が正しいかを知らなければ、正しい妥協と間違った妥協を見分けることもできない。その結果、間違った妥協をしてしまう。
(4)行動に変える
・決定は最初の段階から行動への取り組みをその中に組み込んでおかなければ成果はあがらない。
・決定を行動に移すには、「誰がこの意思決定を知らなければならないか」「いかなる行動が必要か」「誰が行動をとるか」「その行動はいかなるものであるべきか」を問う必要がある。
・行動のための責任が明確にされ、責任を与えられた人たちが必要な行動をとれなければならない。評価の基準、仕事の水準、動機を変えられなければならない。
(5)フィードバックを行う
・決定そのものの中にフィードバックを講じておかなければならない。
・自ら出かけ確かめることは、決定の前提となっていたものが有効か、それとも陳腐化しており決定そのものを再検討する必要があるかどうかを知るための、唯一でなくとも最善の方法である。